Long NguyenがフィットネスSaaSを伸ばせた理由
Long NguyenはEverfitの共同創業者。フィットネス指導者向けに、トレーニング作成、栄養指導、顧客管理、メッセージ対応、業務自動化までを一体化したプラットフォームを育ててきた。原点は、対面指導とオンライン指導の価格差を見て市場機会を見抜いたこと。自らがプロのトレーナーではない立場だからこそ、指導者の業務負荷を下げる自動化に集中し、グローバル展開まで持ち込んだ点が特徴だ。
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概要
Long Nguyenは、フィットネスコーチやジム向けの業務プラットフォーム「Everfit」をJonathan Wangと共同で立ち上げた起業家である。学生時代には学校と学生をつなぐモバイルアプリを作り、それを大学に売却した経験があり、その後はCEOアドバイザリーファームやベトナムの開発チーム運営を経て、現在の事業にたどり着いた。
Everfitの着想は、オンラインのパーソナルトレーニングが対面より大きく安く提供されている現場を見たことから始まった。Longはそこで、フィットネス指導の価値そのものよりも、提供方法の非効率さに大きな改善余地があると捉えたようだ。自分自身がフィットネスの専門家でなくても、コーチの仕事を裏側から支えるプロダクトなら勝負できる。この視点が、現在のプロダクト設計に強く表れている。
ビジネスモデル
Everfitは、個人トレーナー、ジム、スポーツコーチ、栄養指導者などに向けたSaaSである。単なるトレーニング記録アプリではなく、ワークアウト作成、食事管理、習慣トラッキング、フォーム、決済、クライアントとのコミュニケーション、チーム機能までをまとめて提供している。
特徴的なのは「指導の質」だけでなく「運営の手間」を削る方向に重心を置いてきた点だ。Longの発信では、誰でも専門的なIT知識なしにトレーニング事業を回せるようにすることが繰り返し語られている。実際、EverfitはAutomationやAutoflow、オンボーディングフロー、AIによる返信補助、AI Workout Builderなどを前面に出しており、コーチが毎回手作業で行っていた定型業務を減らす設計になっている。
収益源は主に月額課金型のソフトウェア利用料とみられる。加えて、近年はMarketplace構想やAI機能群の拡張も進めており、単体ツールから“コーチビジネスの基盤”へ広げようとしている動きが見える。
収益規模
公開されている収益データは限定的で、正確な現在の月商は確認できなかった。ただし、Long自身は2022年時点で新たな売上マイルストーンに到達し「7 figures」に向かう段階だと述べている。また2025年末の振り返りでは、事業を黒字で伸ばしながら再投資を進めていることにも触れている。
加えて、Everfitの公式ブログでは2025年時点で280,000人超のコーチが190か国超で利用していると案内されている。LinkedIn上では、2022年に18,000人超のコーチが100か国超から参加したという投稿も確認でき、ユーザー基盤が数年で大きく積み上がったことがわかる。売上の絶対額は伏せられている一方、導入規模と組織拡大の動きから見れば、スモールな副業の範囲を超えた本格SaaSとして成長している。
学べるポイント
1つ目は、市場理解の切り口だ。Longは「自分が専門職そのものになる」のではなく、「専門職の業務をどう楽にするか」に賭けた。フィットネスの知識で勝つのではなく、価格差、運営負荷、オンライン移行という構造変化を見たことが出発点になっている。
2つ目は、自動化を価値の中心に据えたことだ。多くの業務用SaaSは機能を増やしがちだが、Everfitはコーチの手間削減を軸に機能群を束ねている。オンボーディング、メッセージ返信、ワークアウト作成、グループ運営まで連動させることで、単機能ツールより乗り換えづらい基盤になりやすい。
3つ目は、顧客像の広げ方である。最初はパーソナルトレーナー向けの文脈が強いが、のちに栄養指導、スポーツ指導、ジム運営へと横展開している。コアは「人を継続的に支援するコーチ業」であり、その共通業務を押さえることで隣接市場へ広げている。
4つ目は、プロダクトの物語づくりだ。Everfitは単に機能一覧を売るのではなく、健康・教育・継続支援という理念と結びつけてブランドを育てている。B2B SaaSでも、思想や世界観が採用や顧客獲得に効くことを示す事例と言える。
日本での再現可能性
日本でも再現余地はある。特に、パーソナルトレーナー、整体、ピラティス、栄養指導、部活動外のスポーツ指導など、個人や小規模事業者が顧客管理を手作業で回している領域はまだ多い。予約、連絡、課金、進捗管理、食事報告が分断されているケースも珍しくないため、Everfit型の統合SaaSは相性がよい。
ただし、そのまま持ち込めば成功するわけではない。日本では、指導現場ごとの商習慣、LINE中心の連絡、対面重視の顧客心理、業種ごとに異なる資格制度への配慮が必要になる。したがって再現するなら、まずは総合プラットフォームを目指すより、特定業種に絞った業務自動化から入る方が現実的だろう。
Long Nguyenの事例から学べるのは、華やかな消費者向けアプリよりも、現場の面倒を引き受ける裏方プロダクトの方が強い場合があるということだ。日本市場でも、指導者や店舗運営者の“毎週発生する繰り返し業務”に深く入り込めれば、十分に勝機はある。
出典
- https://news.ycombinator.com/item?id=38935714
- https://startout.org/aanhpi-founder-feature-long-nguyen/
- https://www.linkedin.com/posts/longdnguyen_what-a-wild-journey-since-we-launched-everfitio-activity-6960791767805812736-Watp
- https://www.linkedin.com/posts/longdnguyen_were-closing-out-everfit-2025-with-strong-activity-7412113456843268096-XnX4
- https://blog.everfit.io/author/longdnguyen?trk=products_details_guest_primary_call_to_action
- https://everfit.io/ai/
- https://everfit.io/fitness-intelligence/
- https://help.everfit.io/en/collections/2124384-group-coaching-autoflow-automation
- https://help.everfit.io/en/articles/13212021-smart-response-early-access
コメント
Long Nguyenの面白さは、フィットネスのスター選手ではなく、指導者の生産性を底上げする側に回った点にある。専門家でないことを弱みにせず、業務設計の観点から市場を見たことで、より広い事業機会を掴んだ。日本でも同種の発想は応用しやすく、特定業界の反復業務を削るSaaSを考える際の参考になる。
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