「声を聞いてもらえなかった」看護師Rachell Dumasが1人で立ち上げた、患者のためのAIアプリ「HEARD」
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アメリカの看護師Rachell Dumasは、自分が患者として救急外来で取り合ってもらえなかった経験から、症状の記録や受診の準備、病院への申し入れを手伝うAIのアプリ「HEARD」を立ち上げた。チームのページで運営の役割についているのは本人だけで、法律や医療の専門家は助言者として支えている。サイトでは、診断や医療の助言はしないと明記している。
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Rachell Dumasが立ち上げた「HEARD」は、患者が記録した症状をAIが読み取り、医師に聞くべき質問や、病院に送る申し入れの文面を用意するアプリだ。作ったきっかけは、アメリカの看護師である本人が、患者として救急外来で取り合ってもらえなかったことだ。HEARDのサイトで、本人は「自分の声が大事にされなかったせいで、命を落としかけた」と書いている。
何をしている人か
Rachell Dumasは、神経の集中治療などの現場で10年以上働いてきた看護師だ。電子カルテの導入と運用にも10年以上関わり、看護情報学の修士号を持ち、同じ分野で博士課程に在籍している。
アメリカ看護師協会のポッドキャスト「SEE YOU NOW」(2026年4月29日公開)によると、本人はある朝、目が見えなくなり、脳卒中のような症状で救急外来に行ったが、胃薬を渡されて帰された。神経の集中治療の看護師として、ただごとではないと分かっていたので、別の救急外来に行き、最終的に、頭の中の圧が高くなる病気(特発性頭蓋内圧亢進症)だと分かった。治療には2回の脳の手術が必要だった。
この経験が、HEARDの出発点になった。
AIの使い方
HEARDは、Human Enabled AI Reporting and Documentation(人の力を生かしたAIによる報告と記録)の頭文字だ。患者と、患者を支える家族のためのアプリで、看護師向けのメディアNurse.orgの記事(2026年4月2日公開)と、HEARDのサイト(2026年11月8日に確認)から整理する。
- 症状を、日付つきで記録する。 写真や音声のメモ、時刻とともに症状を記録しておけば、短い診察の場で何か月分もの経過を記憶だけで説明しなくて済む。
- AIが、記録を読んで質問を返す。 Nurse.orgの記事によると、入力した記録をアプリの中のAIが読み取り、さらに詳しく聞く質問を投げかける。たとえば視界の変化を記録すると、神経内科の医師に聞くべき質問や、次にすべきことを出す。
- 受診の準備をする。 心配ごとに優先順位をつけ、診察で聞く質問を用意するのを手伝う。
- 取り合ってもらえないときに、申し入れの文面を作る。 心配を軽く扱われたとき、記録した経過と証拠をもとに、医療者や病院の患者相談の窓口に送る、きちんとしたメールの下書きを作る。
- 家族と同じ記録を見る。 家族が1つの経過の記録を共有できるので、担当の医療者が変わるたびに、同じ話を一から繰り返さなくて済む。
HEARDのサイトでは、このアプリは医療の診断や助言はしない、と明記している。
アプリと、試せる体験版は、AIでアプリを作れるサービスLovableの上で動いている。
1人での運営
HEARDのチームのページで、運営の役割についているのは創業者でCEOの本人だけだ。ほかに名前が並ぶのは、弁護士、生殖医療の専門医、健康科学の研究者、患者支援の資格を持つ人、ヘルステックの投資家などの助言者(アドバイザー)だ。
- 患者からは、まず無料で。 先行公開の期間中、患者は無料で使える。サイトの料金のページには、正式公開のあとの料金として、月15ドル、25ドル、40ドルの3つのプランが載っている。
- 企業向けの使い道も用意している。 患者と家族のほかに、企業や福利厚生の仲介業者、医療機関に向けて、利用の状況を集計して個人が分からない形にしたレポートを出す仕組みも用意している。
- 物語を自分で伝える。 アメリカ看護師協会のポッドキャストなど、看護師向けの場でHEARDの話をしている。
サイトには投資家向けのページもあり、動く試作品がある初期の段階だと書かれている。今後、資金を集めて人を増やす可能性はあるが、今のところ、チームのページで運営の役割についているのは本人だけだ。
日本でまねするなら
- 自分が現場で何度も見てきた「つまずく瞬間」から作ると、機能がぶれにくい。HEARDの機能は、短い診察、聞き忘れた質問、取り合ってもらえない心配という、看護師として、また患者として知っている場面にそのまま対応している。
- 医療や法律のように資格が絡む分野でAIを使うなら、AIに任せるのは記録の整理や質問づくり、文面の下書きまでにとどめ、診断や判断はしないと最初に決めて明記しておきたい。日本で同じようなサービスを考えるなら、どこまでが医療行為にあたるかや、健康の情報の取り扱いは、専門家に確かめておく必要がある。
- 社員を雇う前に、足りない専門知識を助言者で補う形は、1人で始めるときの現実的なやり方だ。
- AIでアプリを作れるサービスで試作品を作り、体験版を公開しておくと、利用者や協力者、投資家に、口で説明するより早く伝わる。
事業の数字と経緯
- 2026年4月:Nurse.orgの記事で紹介される(この時点では正式公開前で、試験利用の参加者を募集していた)
- 2026年4月29日:アメリカ看護師協会のポッドキャストに出演
- 2026年11月:サイトでは先行公開中で、患者は無料で使える(11月8日に確認)
利用者の数や売上の金額は公開されていない。
出典
- https://www.nursingworld.org/content-hub/resources/syn-podcast/nurses-are-catalysts-rachell-dumas/
- https://nurse.org/news/rachel-dumas-heard-app-brain-condition-dismissed
- https://www.myheardapp.com/
- https://www.myheardapp.com/about
- https://www.myheardapp.com/team
- https://www.myheardapp.com/membership
- https://www.myheardapp.com/founder
コメント
Rachell Dumasの事例で参考になるのは、AIに記録の整理や質問づくり、申し入れの文面の下書きを任せながら、診断や医療の助言はしないとサイトに明記している点だ。機能の一つひとつが、短い診察や聞き忘れた質問など、本人が看護師としても患者としても知っている場面から作られている。法律や医療の専門家を助言者として迎える形は、資格が絡む分野で1人で始める人の参考になる。
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