社員約60人の会社を手放したSteven Gohは、なぜ次の事業を1人で回せるのか
本記事にはアフィリエイト(PR)リンクが含まれる場合があります。詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。
LinkedInデータAPI「Proxycurl」を売却したSteven Gohは、B2Bデータの新事業NinjaPearを人を雇わずに運営している。経理を自動化し、顧客サポートと顧客フォローをAIに任せる一方、商品の方向性や売り方の判断は自分に残している。
- 非公開
- SaaS
- マーケティング/広告
- 非公開
- OpenRouter
- Claude Code
- Codex
Steven Gohは、顧客がクレジットを追加購入したときなどの行動をきっかけに、相手の事業に合わせた文面のお礼メールをAIのエージェントに書かせて自動で送っている。以前の会社では専任の担当がいた顧客フォローを、こうした仕組みに置き換えることで、新しい事業を人を雇わずに回している。
何をしている人か
Steven Gohは、シンガポールに住む連続起業家だ。LinkedInのデータを扱うAPI「Proxycurl」を運営し、LinkedInとの訴訟の和解を経て、2025年に売却した。2026年1月に作り始めたB2B向けのデータ補完と競合調査のデータ基盤「NinjaPear」を、1人で運営している。
AIの使い方
本人が2026年6月30日に自社のブログに公開し、Indie Hackersにも投稿した記事によると、AIは作るところと運営するところの両方に入っている。
開発には、Claude CodeとCodexを使っている。2026年1月に足を骨折して机から離れられなかった時期に、Claude Codeを試しているうちにNinjaPearの試作品を2週間で作り、公開まで進めたという。サーバーは、以前買った小型PCとデスクトップPCの2台を自宅でつないだKubernetesのクラスターで動かしている。Claude CodeとCodexがあれば、Kubernetesのクラスターを組むのは難しくなかったと本人は書いている。
運営では、以前の会社で役割ごとに人がしていた仕事を、自動化やAIの仕組みに置き換えている。
- 経理: 領収書や請求書をXeroに登録する作業を、Kubernetes上で動く自動処理にした。以前は経理の担当者の仕事だった。
- 顧客サポート: 今のNinjaPearより前に公開していた、AIのライブチャットの初期版を使い回している。
- 顧客フォロー: 顧客の行動(クレジットの追加購入など)をきっかけに、AIが相手の事業に合わせて書いたメールを送るエージェントを作った。本人が例として載せたメールは、購入へのお礼に続けて、相手の会社の事業に触れ、NinjaPearで何を解決したいかを尋ねる内容だ。
一方で、任せないことも決めている。本人は、自分のセンスで決めることや、商品の計画・売り込み方、マーケティングはAIで自動化していないと書き、判断には自分が関わると述べている。人はAIではなく人から買う、という考えからだという。
費用として挙げているのは、CodexとClaude Codeの上位プラン(合わせて月200ドル)、データ補完のための外部のデータ提供元、OpenRouter経由のLLMの利用料で、それ以外はほとんどかかっていないという。
日本でまねするなら
リードで挙げた「顧客の行動をきっかけにした、AIによる個別のフォローメール」は、小さな事業でも試しやすい。
- まずは1つの行動から始めるとよい。たとえば、初めての購入や追加購入のあとに送るお礼のメールだ。決済サービスやCRMの通知を、ZapierやMakeのような自動化ツールで受け取り、ChatGPTやClaudeのAPIに文面を書かせる流れが考えられる。
- 文面には、相手の会社のWebサイトなど、相手が公開している情報を材料に入れると、定型文より読まれやすくなる。どの情報を使うかは、相手に不快感を与えない範囲にしたい。
- 送る前に、最初のうちは自分で読んでから送る形にし、内容が安定してから自動送信に切り替えると安全だ。
- Steven Gohがマーケティングや商品の方向性を自分で決めているように、自分の判断が要る仕事はAIに任せない、と先に決めておくのも参考になる。
事業の数字と経緯
本人の記事によると、Proxycurlは閉じる前に約60人の従業員を抱え、その半分以上がソフトウェアエンジニアだった。サーバー代も、管理されたKubernetesのクラスターとバックアップに月6,000〜8,000ドルかかっていたという。NinjaPearでは、自宅の機器と太陽光発電を使うため、サーバー代は0ドルだとしている。
本人は、今回は人を雇うつもりのない1人の創業者として、NinjaPearで「1M ARR」を目指すと書いている。売上は、記事を書いた時点で直近2か月に「10K」を超え(通貨の記載はない)、すでに黒字だという。ただし、その月の売上は落ちていて、まだ商品と市場が合っているとは言えないとも書いている。NinjaPearを売るつもりも、出資を受けるつもりもないという。
2026年10月時点の料金ページでは、10クレジット付きの3日間の無料トライアルと、10ドルからのクレジットのパック、サブスクリプションのプランが案内されている。
出典
- https://nubela.co/blog/how-im-building-a-1m-arr-venture-with-ai-as-a-bootstrapped-solo-founder-15k-revenue-last-mo-10m-last-exit-w-proxycurl/
- https://www.indiehackers.com/post/how-im-building-a-1m-arr-venture-with-ai-as-a-bootstrapped-solo-founder-15k-revenue-last-mo-10m-last-exit-w-proxycurl-e604bbedda
- https://nubela.co/pricing
コメント
Steven Gohの面白さは、AIに任せる仕事と任せない仕事を、最初に線引きしている点だ。経理や顧客フォローのような、手順が決まっていて回数の多い仕事は仕組みにし、何を作るか・どう売るかの判断は自分で持つ。以前の会社で役割ごとに人を置いていた経験があるからこそ、置き換える範囲を具体的に選べたのだろう。
海外のソロプレナーたちの工夫を、日本で実践するとしたら? ソロプレナーの道具箱はこちら →
関連記事
Mihai Mateiとは?16歳でAIアシスタント「Jarvis」を開発、3週間でMRR1万ドルを達成
コードを書けない16歳の高校生が、Claude CodeとCodexでデスクトップAI「Jarvis」を作り、公開から約3週間でMRR 1万ドルに届いた。機能の改良では、AIに採点役(LLM judge)を作らせ、新旧の仕組みを点数で比べながら改善している。
Jacky Liangが実践。AIサポートSaaSで小規模企業を獲得する
Jacky Liangは、AIカスタマーサポートSaaS「Answer HQ」を個人で育てた創業者だ。小規模企業向けに絞り、ウェブサイトやドキュメントを取り込んで24時間対応のサポート窓口を作れる点を打ち出している。2025年末にMRR 1,300ドル、その後2026年には2,000ドル超まで伸ばし、ZendeskやShopifyとの接続、エージェント機能の追加でプロダクトを進化させてきた。
Rodrigo Santos|LinkedIn営業SaaS「Vencefy」を生んだソロ起業家
Rodrigo Santosは、子ども向けプログラミング教育事業Happy Codeの売却後、LinkedIn向け営業支援SaaS「Vencefy」を立ち上げた起業家だ。最初は別テーマを検証していたものの、市場の反応から営業支援ニーズへ軌道修正し、プロダクト未完成の段階で初受注。その後は自らVencefyを使って顧客を開拓し、短期間で高単価顧客を積み上げた。売る相手を急いで固定せず、複数の顧客タイプを実際に試した上でICPを絞り込んだ点が大きな特徴だ。
複数AIを束ねてSaaSを前に進めたFillip Kosorukov
心理学のバックグラウンドを持つFillip Kosorukovは、単一の万能AIに頼るのではなく、役割ごとに複数のAIツールを分担させる運用へ切り替えた。LocalMentionやFixMyRecordといったSaaSを進める過程で、共有Markdown知識ベースを中心に据え、開発・調査・文脈維持を分離した点が特徴だ。派手な自動化よりも、AI同士の受け渡し設計に重心を置いた事例として参考になる。