John Goeringは、コードを1行も書かずに潜水艦シミュレーターを作り、Steamで数千本売った
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ベルリンのインディー開発者John Goeringは、空き時間の夜と週末だけで、第二次世界大戦の潜水艦シミュレーター「Silent Shark」を6か月で作り、Steamで発売した。コードはすべてCodexに書かせ、自分は資料集めと設計、遊んだ人の声を拾うことに時間を使った。Hacker Newsでの本人の投稿をもとに、その進め方を整理した。
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John Goeringは、第二次世界大戦の太平洋を舞台にした潜水艦シミュレーター「Silent Shark」を、1人で作ってSteamで売っている。本人によると、コードはすべてOpenAIのコーディングエージェント「Codex」に書かせ、自分では1行も書いていない(手を入れたのは、ときどきのCSSの調整だけ)。作業は空き時間の夜と週末だけで、作り始めてから6か月で発売にこぎつけた。発売から約2週間で、Steamのレビューは100件を超え、数千本が売れたという。
何をしている人か
John Goeringは、ドイツ・ベルリンのインディー開発者だ。Steamのページでは、Silent Sharkの開発元・パブリッシャーとも本人の名前になっており、ヘッドトラッキングのアプリ「SmoothTrack」や、考えを整理するアプリ「Mindscope」の開発者でもあると紹介されている。Hacker Newsでは、プロとして20年以上コードを書いてきたと書いている。
Silent Sharkは、本人が子どものころ父親と遊んだ潜水艦ゲーム「Silent Service II」から続く趣味を形にしたものだ。昔から好きだったのは、不確かな情報から敵船の針路と速度を割り出し、海図の上で幾何学的に攻撃の位置を決める部分だった。そこだけを取り出したシンプルな地図のゲームを作りたい、という考えを長く温めていて、2026年2月に試作を始めた。試作が思いのほか面白かったので、そのまま製品まで作り切った。
AIの使い方
本人がHacker Newsに書いた2つの投稿(2026年5月のベータ版の紹介と、8月の副業の収益を報告し合うスレッドへの書き込み)から、進め方を整理する。
- 最初から「コードはすべてAIに書かせる」と決めた。 始めたきっかけは、プロンプトの使い方を自分で鍛える実験だった。Codexにどこまで任せられるかを試すつもりで、コードを書く作業はすべてCodexに渡した。結果として、最後まで任せ切れたという。本人は、早い段階でこう決めたことが「素晴らしい経験だった」と振り返っている。
- 1つのコードから、すべての版を作っている。 ゲームはTypeScriptで書かれ、ブラウザ版はViteで作ったWebアプリになっている。Windows・Mac・Linux(Steam Deck)・スマホ向けのビルドは、同じコードをElectronで包んで作った。無料のブラウザ版とSteamの製品版を、1つのコードから出せる構成だ。
- 当時の資料を集めて、計器を再現した。 魚雷を撃つための計算機(TDC)の元のマニュアル、日本の商船を見分けるための米海軍の識別資料、レイテ沖海戦の報告書に載っていた潜水艦の哨戒海域の地図など、公開されている当時の資料を参考にした。いくつかの計器は、実際の潜水艦の計器をもとに作ったという。
- 画像生成AIは、ほとんど使っていない。 使ったのは、古く傷んだ歴史的な地図2枚を読める状態に整えるときだけだという。
- 遊んだ人の意見を、すぐに製品に入れた。 ベータ版をHacker Newsで公開すると、45件のコメントが付いた。照準の計算の変化が分かりにくいという声には、数分後の予測位置を半透明の船で表示する機能を足し、本人は「気に入ったので入れた、試してみて」と返している。チュートリアルの消し忘れのデバッグ機能や、重すぎるアイコン画像の指摘にも、その場で直したと答えている。
一方で、本人はこの経験から、20年以上のプロとしてのコーディングの経験の価値が、数年前よりはっきり下がったと感じたとも書いている。
日本でまねするなら
- まずは「自分が長く好きなもの」の、いちばん面白い部分だけを切り出した小さな試作から始められる。Silent Sharkも、本人が昔の潜水艦ゲームでいちばん好きだった「海図で計算する部分」に絞って作られている。
- コーディングエージェントに任せるなら、TypeScriptでWebアプリとして作り、配布先ごとの違いはElectronなどで吸収する形にしておくと、1つのコードを直すだけで全部の版に反映できる。
- 自分の時間は、AIが持っていない一次資料や専門知識を集めることに使いたい。日本なら、国立公文書館や国立国会図書館のデジタルコレクションなど、公開されている資料が素材になる。使う前に、利用条件は確認しておきたい。
- 早い段階で無料版や体験版を出し、遊んだ人の声をAIに渡してすぐ直す。この速さそのものが、1人で作る製品の強みになる。
事業の数字と経緯
- 2026年2月:試作を開始
- 2026年5月:Hacker Newsでベータ版を紹介(125ポイント)。この時点で作業は約3か月分
- 2026年5月31日:Steamで無料の体験版を公開
- 2026年8月12日:Steamで製品版を発売
8月下旬のHacker Newsの書き込みで、本人は、発売から2週間でSteamのレビューが100件を超えて99%が好評、数千本を売り、ウィッシュリスト(購入希望の登録)は2万5,000件を超えてまだ増えている、と書いている。2026年10月30日時点のSteamのページでは、レビューは146件で97%が好評、米国のストアでの価格は17.99ドルだった。日本語を含む10言語に対応している。
売上の金額は公開されていない。数字はいずれも本人の投稿とSteamの表示によるものだ。本人はこのゲームを、空き時間で進める副業のプロジェクトと位置づけている。
出典
コメント
面白いのは、コードを書く作業をすべてCodexに渡したうえで、人の時間を当時の一次資料の読み込みと計器の再現に振り向けている点だ。20年以上コードを書いてきた本人が、その経験の価値が下がったと書いているのも率直で、作り手の役割がどこに移るかを考える材料になる。
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